役員は一二八万人、雇人のいる業主は五万四〇〇〇人である(『労働力調査』八二〇〇一年)の推計では、管理的職業従事者は二〇二万人、うち雇用者は六四万人、役員一三三万人、業主四万人となる)。
『国勢調査』(一九九〇年)では、管理的職業従事老約二五〇万人のうち雇用者は三五%、八八万人弱で、一四三万人強は役員、一八万人強は業主であった。
つまり、この一〇年間に雇用者たる管理的職業従事者は三分の一も減少している。
このような管理職の減少は、「管理職リストラ」「管理職の中抜き」「営業などへの配転」などの世評を数字的に確認するものである。
なお、「管理職」を年齢層別にみたのが図表5-2である。
圧倒的に五〇代以上である。
このようにみると、雇用者である管理職は、以前からとても少なく、現在では就業者の一%もいないことになる。
本当に、こんなに少ない管理職をめざして、日本のサラリーマンは競争してきたのであろうか。
そうではないだろう。
管理職をめざしているのではなく、次に議論する「管理職クラス」をめざしているのである。
それも少数者としてではなく、「人並みに」-「人並み」とは数的には同世代の多数を必ずしも意味しないのだがーという意識のもとにめざしているのである。
さて、このように日本には管理職が多いとはいえない。
フィリピンや韓国に比べると多いが、アメリカよりもはるかに少ない。
アメリカが一四・七%を占めるのに対して、日本はわずか三・三%である。
アメリカで多くの労働者が管理職扱いされているのは統計上の定義の違いであるように思える。
アメリカに日本の四倍以上も管理職がいるとは思えない。
その点でいえば、あとで述べる「管理職クラス」と比較したほうがよいかもしれない。
むしろ、国際的にみると、アメリカと日本を含むアジア諸国で販売職・サービス職が多くなっている。
とかく国際比較はむつかしい。
国(カナダ,ドイツ,イタリア,オランダ)は,販売職にサービス職を含む。ともあれ、このように日本は国際的にみて管理職は多くないし、近年減少さえしている。
管理職クラス管理職は増えてこなかったにもかかわらず、一九八〇年代から一貫して「管理職」が増えつづけたといわれた。
なぜだろうか。
一九九〇年代に組織の注:1988年基準の国際職業分類に準拠しているスウェーデソ,香港,韓国,オーストラリアフラット化がいわれ、成果主義の嵐が吹き荒れ、管理職は多くがリストラされた。
たしかに、管理的職業従事者の数は減っている。
しかし、処遇としての「管理職」にそうした変化が起こったのだろうか、変化があったとして、どの程度のものなのか。
冷静に、組織のフラット化の程度を管理職クラスの比率でみることが最適であろう。
労働省(厚生労働省)『賃金構造基本統計調査』で、これを知ることができる。
この調査は、職階別賃金を調べるのが本来の目的であるが、多くの企業が職能資格制度にもとづいて従業員を処遇しているため、実質上、部下をもつ本来の管理職だけでなく、本来の管理職と同等の職能資格に格付けられた人々も含んでいるからである。
以下では、この本来の管理職と同等に格付けられた人々を「管理職相当職」と呼び、これと本来の管理職をまとめて「管理職クラス」と呼ぶこ棚とにしよう。
注:企業規模100人以上を対象とする。管理職が意味をもつ企業規模一〇〇人以上についてみたのが、図表5-4である。
おどろくほど、この一〇年間に管理職クラスの数は変化していない。
率でみると課長などはむしろ相対的に増えている。
九二年までつづいた管理職クラスの膨張が、バブル崩壊後止まったにすぎないというのが実情である。
『賃金構造基本統計調査』は一〇人以上の常用労働者のいる企業を対象としているが、一〇~九九人規模の企業で働く一般労働者を加えると、一〇〇人以上の企業で働く労働者の一五三%となる(二〇〇〇年)。
そこで、管理職クラスの人が同じ率でいると考えると、一〇人以上の規模で働く管理職クラス(部長+課長+係長)は約三一五万人いることになる。
先ほどの『国勢調査』のざっと五倍以上いることになる。
これはいったいどうしたことなのだろうか。
これこそ私たちにすっかりなじみとなっている職能資格制度のたまものなのである。
つまり、五人に四人は管理職の仕事をしていない「管理職クラス」つまり「管理職相当職」なのである。
彼らは現実には管理職以外の専門職なのであろう。
アメリカやイギリスほど「管理職」がインフレ状態で大量ではないとしても。
大企業とされる従業員一〇〇〇人以上についてもう少し長い時系列変化をみたものが、図表5-5である。
にわかには信じがたい事実がそこにある。
部長や課長は高度成長期から増加しつづけ、その流れは一九九〇年代半ばまで続いた。
一九九〇年代から現在までに起こっていることは、注:1975年はサービス業を除いて算出。課長待遇職などを含むが,部長・次長・課長代理・課長補佐などは含まない。企業規模1000人以上を対象。この一貫した部長や課長の膨張がようやく止まったということにすぎないのである。
部長はまだ止まっていないといってよいかもしれない。
ということは、この大不況のなかで組織のフラット化は、「課のない課長」とか「部下のいない課長」などといった人々の肩書きがマネジャーとかグループリーダーなどというカタカナ文字になったにすぎないといっても過言ではない。
管理職リストラといわれるが、管理職クラスがほかの社員と比べてより減ったわけではないのである。
頬似した定義にもとづいて「管理職クラス」を調べたものに、東京労働局が二〇〇〇年末に実施した『いわゆる管理職に関する実態調査』(二〇〇一年発表)(3)がある。
この調査での「管理職」の定義は「役職に就いていることをもって時間外労働等の割増賃金の支給対象とならない労働者」である。
これによれば、調査事業場三八社(本社)のうち、「管理職」の割合は平均三八・六%であった。
これらの労働者には時間外・休日労働の割増賃金が支払われない。
調査対象企業全体(本社十出先機関)における「管理職」の割合は平均二三・八%であり、三八社中三二社で本社のほうが出先機関より「管理職」率が高い。
一方、六社では本社よりも出先機関のほうが「管理職」率が高かった。
「管理職」比率が四〇%を超える企業が本社では一六社、対象企業全体でみると三社。
母数が三八社だから、いかに「管理職」が多いかわかる。
とうぜん、部下をもたない「管理職」がいる企業が圧倒的に多い(三二社、八四・二%)。
部下をもたない場合、何を「管理」する「管理職」であるのか、という設問に対しては、「管理職」の登用基準にはとくに職務との関連性がないとする企業は一八社。
専門職・スタッフ等の職務の専門性に対して「管理職」待遇にしているものであって、部下の有無は重要な要素ではないという企業は一〇社であった。
本来、管理職の仕事とは、業務がスムーズに遂行できるように、多くの部下を適切に管理し必要な意思決定を責任をもって下すことである。
そのためには業務判断能力とともに部下管理能力が必要不可欠である。
業務判断能力は、現在の労働者にとって最も基本的な技能・職業能力であり、管理職に限られるものではない。
したがって、管理職に特有の技能・職業能力とは一言でいえば部下の判定・管理作業能力なのである。
これに対して、管理職相当職の仕事は、第一線労働者である。
職業としては専門的労働者あるいは事務労働者であろう。
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